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意識不明の重体となった交通事故の賠償事例を解説

バイクのイメージ

今回取り上げるのは交差点で発生した自動車と自動二輪車(バイク)との衝突事故です。この事故により、バイクを運転していた被害者は意識不明の重体となってしまいました。
ひと口に意識不明の重体と言ってもその後の経過は様々です。この事故では被害者に重い後遺障害が残ってしまいました。加害者側との裁判の結果、被害者には2億円を超える損害が認められました。 

意識不明の重体となった事故の発生状況 

関西のある県で交通事故が発生しました。
事故が起きたのは右折レーンをあわせて片側3車線の交差点です。加害者が運転する自動車は交差点を右折しようとしたところ、直進してきたバイクと衝突。バイクを運転していた男性は外傷性脳幹部損傷などの重症を負い病院に搬送されました。
医師による事故直後の診断は下記のとおりでした。

  • 遷延性意識障害を伴う外傷性脳幹部損傷等の傷害 

意識不明の重体となった事故後の経過 

被害者は事故後、約5年以上の長期にわたって入院をしました。その後、症状固定となりましたが、残念ながら以下の後遺障害が残りました。

  • 失語
  • 発語困難
  • 四肢体幹不全麻痺
  • 嚥下障害
  • 精神症状(易興奮性等)

つまり、事故の後遺症により通常の生活を送れなくなりました。
損害保険料率算出機構に後遺障害等級の申請を行ったところ「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」として、「別表第一の第1級」が認められました。「別表第一の第1級」は後遺障害等級の最上位です。

被害者は症状固定後もリハビリテーションを受けるために入院し、現在は自宅で介護を受けながら療養生活を送っています。 

意識不明の重体となった事故の賠償に関する問題点

この事故では被害者に重い後遺障害が残ったため、今後の介護費や自宅改造費、逸失利益を中心に被害者と加害者が裁判で争うことになりました。

入院付添費はどの程度認められるのか?

入院付添費は、被害者が入院中に付き添った家族などの介護費用のことです。
現在の病院は「完全介護」を基本としており、家族の付添いは不要とされています。そのために家族などによる付添介護の必要性をめぐって争われることはよくあります。
実際のところ、被害者が重症であれば家族による付添介護の必要性が認められ、入院付添費の支払いを命じる傾向にあります。
今回は被害者が重い症状であったことが考慮され、入院期間中1972日中、1593日分の入院付添費が認められました。また、入院付添費が認められたことにより、付添交通費や付添宿泊費も認められています。

将来の介護費はどの程度認められるのか? 

被害者は意識不明の重体となった事故の後遺症により、将来にわたって介護が必要となってしまいました。しかし、介護費用の是非や額をめぐって被害者側と加害者側が争うことは珍しくありません。
今回のケースでは被害者側がご家族とヘルパー2人の介護費として約1億7000万円を要求しました。裁判でも介護の必要性が確認され、将来介護費として約1億円が認められました。被害者の重い症状を考慮して、手厚い介護費用が認められる結果になりました。

自宅改造費、自動車購入改造費も認められるか? 

重い後遺障害によっては自宅の改造や自動車の購入・改造が必要になる場合があります。しかし、将来の介護費と同様に自宅改造費や自動車購入改造費の是非や認定額をめぐって争われることが多く見られます。 
今回のケースで被害者側は自宅改造費として約1400万円、車椅子対応の自動車購入・改造費用として約140万円を要求しました。裁判では被害者側の主張が全面的に認められ、自宅改造費・自動車購入改造費に関しては満額回答となりました。

後遺障害により働けなくなった補償は? 

被害者の事故当時の年齢は28歳、症状固定時は35歳でしたが、事故により意識不明の重体に。治療後も通常の日常生活を送れなくなり、当然働くこともできません。
交通事故の賠償では将来の働けなくなった分の補償「逸失利益」も考慮されます。ただし、被害者の状態や認定額をめぐって被害者側と加害者側が争うことはあります。
被害者側は28歳以降の就労可能年数を32年間とし、30歳から34歳の平均賃金額とライプニッツ係数に基づいて逸失利益を計算。要求額は約7600万円となりました。
裁判では被害者が労働能力喪失率100%であることが認められ、被害者側の主張どおり約7600万円の逸失利益が認められました。

意識不明の重体となった事故に対する賠償金額 

治療や慰謝料を含めると最終的な賠償金額は以下のとおりになります。

項目本件の賠償金額
入院費等87万円
入院雑費295万円
入院付添費1274万円
付添交通費429万円
付添宿泊費209万円
治療関係費(症状固定以降)450万円
今後の治療費・介護費等1億1969万円
家屋改造費等1576万円
休業損害1166万円
逸失利益7669万円
慰謝料3240万円
合計2億8369万円

この事故では加害者が運転する自動車は制限時速を30キロもオーバーする速度で交差点に進入したことが確認されています。一方、被害者も制限速度を遵守していませんでした。このことから9対1の過失割合となっています。実際に支払われる賠償額は過失割合で相殺されたものとなります。

重症事故の被害者に寄り添う弁護士の役割

今回の事例では裁判で争うことになり、当然のことながら弁護士が被害者の方の弁護のため法廷に立ちました。ただし実際の交通事故では相手方の保険会社との示談で解決することの方が多くなります。そうした場合も含め、被害者の方にとっての弁護士の役割とはどんなものでしょう?

保険会社との交渉を代行 

保険会社との交渉は治療中から断続的に続き、被害者のご家族にかかるプレッシャーは相当なものがあります。また、保険会社は支払い金額を少しでも下げたいので、交渉は厳しく難しくなります。弁護士が交渉を引き受けることで、被害者やご家族が直接保険会社から連絡を受けることは一切無くなり、プレッシャーから解放されます。

将来の不安要素を軽減

当面の治療費以外の保険金は事故直後に支払われるものではありません。長期にわたる治療の後に保険会社との交渉を経てやっと支払われます。ですから保険金を受け取るまでに数年を要する事例も珍しくありません。当面の生活費や将来について大多数の方が不安を感じるのではないでしょうか。
弁護士は最終的な示談や裁判までのサポートをするだけではなく、これまでの経験から支払われる保険金や慰謝料の見通しを立てることができます。これにより被害者やご家族の将来についての不安が大きく軽減されます。

弁護士の基準で金額交渉

重い後遺障害が残る事故の場合は、慰謝料はもちろん将来の介護費用や逸失利益の金額も含めて、支払われる保険金の金額はとても大きなものになります。事故によって受けた苦痛を消し去ることはできませんが、正当な損害額を勝ち取ることは被害者やご家族にとって重要なことであり、正当な権利でもあります。
ただし、弁護士が交渉をすることではじめて保険会社は正当な金額を支払うというのも事実です。弁護士を入れて弁護士の基準で交渉した場合と、相手の保険会社にすべて任せた場合では、最終的に受け取る金額に億単位の差が出るケースがあることは、ぜひ知っておいてください。

被害者とご家族に寄り添い、その苦しみを少しでも軽減するため徹底的に交渉する。それが私たち弁護士の役割だと考えています。

※本事例は、京都地裁 平成24年10月17日判決の事例をもとに構成されたものです。本事例は本事務所により提訴された事件とは異なっています。特定を避けるため、実際の事例とは若干異なった数値、記載をしています。あらかじめご了承ください。

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