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遷延性意識障害の事故で3億円が認められた事例

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本件は、T字路における自動車と自転車の衝突事故です。
自転車に乗っていた被害者には3億円以上の損害があると認定されましたが、過失割合が大きいとして50%減額された事例です。

なお、本件において被害者は原告ではありませんが、複雑になるので被害者の賠償額の点に絞って解説します。
またなるべく専門用語は避けて分かりやすく書いています。

事故の発生状況

中部地方のある県で交通事故が発生した。
T字路で自動車と自転車が衝突したという事故である。実は自転車の側には一時停止の標識があったのだが、自転車に乗っていた当時16歳の男性は一時停止せずに交差点に進入し、結果として自動車に跳ね飛ばされてしまった。

男性はすぐに病院に運ばれ、治療を受けた。
病院による診断名は下記のとおりであった。

  • 重症頭部外傷
  • 頸椎骨折

遷延性意識障害と診断された経緯

男性は、一般病院に約6ヶ月間入院した後、療護センターに転院した。

※療護センターとは、自動車事故による脳損傷で重度の後遺障害が残り、治療と常時の介護を必要とする方のための施設です。社会復帰の可能性を追求しながら手厚い治療と看護、リハビリテーションを行っているのが特長です。

そして事故から約1年6ヶ月の入院の後、症状固定となった。症状固定時の診断書には下記のとおり診断された。

  1. 頭部外傷後遷延性意識障害
  2. 四肢体幹運動障害

1の遷延性意識障害とは、要するに意識不明の状態がずっと続いていることをいう。
本件では、簡単なあいさつ程度は理解可能であるが、発語はなく十分に意思疎通を図ることは不可能とされ、遷延性意識障害と診断された。

2の四肢体幹運動とは、手足を自由に動かせないことをいう。
本件では、手足は麻痺し、関節も動かしにくい状態になり、自力での寝返りや移動は不可能とされ、終日要介護状態にあるとされた。

男性は、症状固定後も療護センターに継続して入院していたが、約2年9ヶ月の入院の後に退院し、自宅介護に移った。

遷延性意識障害で一級に

症状固定後、後遺障害等級の申請を行ったところ、下記の等級に認定された。

別表第一 第1級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

本件で遷延性意識障害の損害額をどう算定するかの争点

本件では男性にどのような損害が生じ、その損害をどのようにお金に換算するかが争いとなった。
争いは様々な点に及んだが、主な争点を記すと下記のとおりである。

1 付添看護費

付添看護費とは、男性が入院していた間に男性の母親が仕事を休んだ分の賠償である。
「仕事を休んでまで病院に看病しにいったのに、その分の給料を支払ってもらえないの?」
通常の感覚ではこう感じるのが普通ではなかろうか。
しかし、現在の病院は「完全介護」の建前を取っている。つまり病院が患者の世話の一切を見るので、家族などの介護は不要とされているのである。このため家族にとっては、本人の看病のために毎日病院に通ったのに、仕事を休んだ日が一切保障されない、ということになってしまう。
ただ、本件のように重度の障害があるような事故の患者の場合、裁判所も付添看護費を認める傾向にある。
本件でも、裁判所は約143万円もの付添看護費を認めた。

2 通院交通費

これは家族が病院へ通うための交通費である。
「交通費も払ってもらえないの?」
実際に家族が事故にあった時、交通費の支払いを拒否されている方を多く見る。
これは結局は完全介護を盾にして、保険会社が支払いを拒否するからである。
しかし通常の家族の感覚からして、家族、特に我が子が入院しているのに交通費も出ないなどということは到底我慢できるものではない。
交通費を支払ってもらえないがどうすればよいか、という相談は実は結構多い。
本件では、介護が必要ということで、当然交通費も認められた。

3 逸失利益

逸失利益とは、得られなくなった将来の収入分のことである。後遺障害によって将来働けなくなったのだから、その賠償をするのは当然である。
しかしこの逸失利益もよく争いになる。
若者であれば、もともと収入が高くないのは当たり前なのだが、これを保険会社は都合よく利用し、現時点での収入を基に計算をする。
しかし、日本の平均収入は年齢が上がるにつれて上昇していくから、事故当時の若者の賃金を基準にするとかなり被害者に不利になる。
いかに年齢が上の平均を基にするかが弁護士の腕の見せ所となるわけである。
本件では、最終的に平均的な賃金が認められた。実質的な勝利である。

4 将来介護費

寝たきりの状態になると、当然誰かがずっとそばで介護をし続ける必要がある。
家族が介護の中心になるが、どの家族でもつきっきりの介護ができるとは限らない。また、今は介護できても介護するのが親御さんの場合、年齢が上がると介護できなくなってしまうことも考えられる。
自宅で介護するのか、病院や施設で介護するのか、そういった問題もある。
ただ、将来介護費はかなりの高額になるので、争いもそれだけ激しい。
本件では、最終的に1億円を超える将来介護費が認められた。

5 住宅改造費

寝たきりの状態になると、事故前から住んでいた住居では介護できないこともある。
そうすると、住居を改造したり、場合によっては新築しなければならないこともある。当然の事ながら住宅は高額な不動産だから、金額もかなりのものになる。
本件では、2000万円の住宅建築費用が認められた。

6 その他の費用

その他の費用としては、福祉車両の購入、介護消耗品の購入、介護器具としてのベッドやリフトなどの購入がある。
これらも本件ではきちんと認められた。

(1)医療機器類
 (ア)エマジン小型吸引器(携帯用)6万3000円
 (イ)ミニック(吸引器)(据置き用)5万6400円
 (ウ)パルスオキシメーター 6万8250円
 (エ)モニタープローブ 1万1000円
 (オ)ボイスキャリーペチャラ(トーキングエイド)9万8800円

(2)ベッド類
 (ア)担架ベルカ 2万6250円
 (イ)移乗ボード 4万2000円
 (ウ)安心スロープ 2730円
 (エ)楽匠(介護ベッド)28万3500円
 (オ)ベッドサイドレール 1万5750円
 (カ)キャスター 1万5750円
 (キ)ベッドサイドテーブル 4万1475円

(3) 寝具類
 (ア)体位変換クッション(円柱型)9400円
 (イ)体位変換クッション(枕型)3400円
 (ウ)クッションカバー 2200円
 (エ)オスカーエアタイプ(ベッドマット)16万8000円

(4)リフト 241万1491円

(5)ケアスロープ 17万7488円

(6)車いす 361万2666円

以上を合計すると下記の表のとおりとなった。

項目遷延性意識障害の賠償額
治療費366万円
交通費41万円
休業損害44万円
入院雑費78万円
付添看護費143万円
将来看護費用1億2803万円
将来医療関係費1010万円
将来雑費942万円
福祉車両購入費565万円
入通院慰謝料352万円
住宅改造費2000万円
逸失利益9114万円
後遺障害慰謝料2800万円
合計3億307万円

ただし、本件において原告の請求は最終的には否定されている(請求棄却)。
本件においては被害者の過失が50%と判断され、賠償額が50%減額されたことが大きく影響した。

弁護士に依頼するとご家族にはどういうメリットが?

本件では、ご家族は弁護士に事件を依頼されたわけですが、交通事故を弁護士に依頼することで家族にどういったメリットがあるのでしょうか?

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1 何年にも渡る保険会社との交渉からの解放

治療中から長期間に渡って保険会社と交渉していくのはかなりのプレッシャーとなります。また実際に保険会社に支払いを拒絶されてしまうと、どう対応して良いのか、なかなか難しいものになります。
弁護士が難しい交渉を行うことで、ご家族はプレッシャーから解放されます。

2 将来への不安からの解放

交通事故は、最終的に保険金が支払われるまで数年に渡ることも珍しくありません。
一体いつ終わるのか、どういう手続きを踏んでいくのか、何をすべきか、最終的にいくら支払われるのか…。ご家族の心配は尽きません。
弁護士は、こういった手続きの進み方、ご家族が最終的な示談に向けて行うべき行動を示し、支払われる保険金を最大化して行きます。

3 将来の経済的補償

交通事故で遷延性意識障害ともなると、入院が長期間に渡り、また退院後もご家族の介護の負担も非常に大きいものになります。アズール法律事務所にご依頼いただいた方も、多くの方が仕事を完全にやめて介護に専念されています。
そのため、当然介護ケアを学ぶ必要もありますが、ご本人に加え、介護される方の生活費も不安のない額が必要です。
最終的な示談額は、弁護士に依頼するのとしないのとでは、時には億単位の差が出る可能性があります。
弁護士費用を支払ってもあまりあるメリットがご家族にあります。

※本事例は、名古屋地方裁判所平成20年11月17日判決の事例をもとに構成されたものです。本事例は本事務所により提訴された事件とは異なっています。特定を避けるため、実際の事例とは若干異なった数値、記載をしています。あらかじめご了承ください。

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