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びまん性軸索損傷

2021年6月30日更新

びまん性軸索損傷イメージ

「びまん性軸索損傷(びまんせいじくさくそんしょう)」とは脳の細胞をつなぐ線(軸索)が広範囲にわたってちぎれてしまうことです。交通事故で頭が強く揺さぶられ、脳に回転性の力が加わったことにより起こる症状です。

一度ちぎれてしまった軸索などの脳細胞は再生することはできません。そのため、びまん性軸索損傷では言語・記憶の障害や身体の麻痺などの重い後遺障害が残る可能性があります。

この記事ではびまん性軸索損傷について、弁護士が詳しく解説しています。皆さまの疑問や不安を解消するために少しでもお役に立てば幸いです。

アズール法律事務所は交通事故の被害者を徹底サポート

交通事故で「びまん性軸索損傷」のとき、頼っていただきたいのが交通事故と脳の傷害に詳しい弁護士です。アズール法律事務所は全国の交通事故の被害者をサポートしておりますので、まずは電話かメールでご相談ください。

びまん性軸索損傷とは

脳内の神経細胞
脳内の神経細胞

びまん性軸索損傷とは、交通事故などで脳に強い力がかかった場合に、脳内の神経細胞をつなぐ線が広範囲にわたって切れてしまうことをいいます。
脳の神経細胞をつなぐ線を軸索(じくさく)といいます。この軸索が広範囲(びまん性)に切れてしまうことから、「びまん性」軸索損傷と呼ばれます。

軸索は一度損傷を受けると、つながった先の軸索・脳細胞へと損傷が広がることが知られています。損傷を受けた軸索だけでなく、さらに二次的に広範囲の軸索・脳細胞が損傷するため、事故直後は脳が腫れ頭蓋内の圧力が上昇することがあります。
また、強い衝撃を脳に受けることから、びまん性軸索損傷では意識障害が数時間以上続くのが通常です。

びまん性軸索損傷と局所的脳損傷との違い

びまん性軸索損傷は、脳が回転することにより脳全体にわたって軸索が損傷する症状です。このためMRIなどの画像には、脳全体にわたってびまん性軸索損傷特有の点状の出血が見られます。

局所的脳損傷は、びまん性軸索損傷とは異なり、脳の一部分が損傷する状態です。
脳挫傷・急性硬膜外血腫・急性硬膜下血腫・脳内血腫などに分けられます。

びまん性軸索損傷の原因となる事故

びまん性軸索損傷は、頭が強く揺さぶられ、脳に回転性の力が加わることにより起こる症状です。
そのため、歩行中に車に跳ね飛ばされてしまったり、バイクや自転車に乗っていて車にぶつかられて数十メートル飛ばされたりすることで、頭が強く揺さぶられることが原因となります。

びまん性軸索損傷の治療

残念ながら現状では、びまん性軸索損傷を治療する方法はありません。軸索が広範囲にわたって損傷してしまうことから、一つ一つ軸索をつなぐことはできません。また脳細胞は一度損傷を受けると再生することはありません。そして再生させる治療法も現在では存在しません。
このため、びまん性軸索損傷の患者さんに対しては、頭部外傷に対する一般的な処置が行われています。頭蓋内の圧力を下げるため頭蓋骨を開く手術などは行われますが、あくまで二次的な脳損傷を予防するためであって、びまん性軸索損傷に対する直接の手術をするものではありません。

びまん性軸索損傷の治療が可能な病院

病院イメージ

びまん性軸索損傷は脳外傷による症状であり、脳外科のある病院での治療となります。
びまん性軸索損傷では意識が消失するような重篤な状態におちいる患者さんもいらっしゃることから、ICUやSCUでの治療が行われます。
ICUは集中治療室のことであり、脳外傷で意識が消失した患者さんなど、急性期の重症患者を受け入れる病室です。
SCUは一般的には脳卒中の患者さんを受け入れる集中治療室ですが、外傷性の脳損傷の患者さんを受け入れる場合もあります。

びまん性軸索損傷の後遺障害

びまん性軸索損傷では、予後は一般的にあまりよくありません。脳に様々な後遺障害が残る可能性があります。
具体的には、遷延性意識障害・高次脳機能障害・体の一部の麻痺などの後遺障害が残ります。

遷延性意識障害とは?

遷延性意識障害イメージ

遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい)は、長期間にわたって意識不明の状態が続くことをいいます。
いわゆる植物状態です。
交通事故でびまん性軸索損傷と診断された方のうち、非常に重篤な被害者の方が遷延性意識障害と診断されます。
遷延性意識障害の患者さんは、大脳だけでなく、運動をつかさどる小脳部分にも障害がある場合が多く見られます。

なお医学上、遷延性意識障害であると判定されるには以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 自力移動不能(自分で移動できない)
  2. 自力摂食不能(自分で食べることができない)
  3. 糞便失禁状態(自分でトイレができない)
  4. 意味のある発語不能(意味のある言葉を発することができない)
  5. 簡単な従命以上の意思疎通不能(簡単な問いかけに反応する以上の意思疎通ができない)
  6. 追視あるいは認識不能(ものを目で追いかけることができない)

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害(こうじのうきのうしょうがい)とは、びまん性軸索損傷と同じく、交通事故などで頭部に強い圧力がかかった場合になる障害です。
びまん性軸索損傷は、脳の一部である軸索が損傷して起こる障害ですが、高次脳機能障害は軸索の損傷に止まらず様々な原因によって現れてくる人間としての脳の機能全般の障害をいいます。
「高次」脳機能というのは、人間としての「高次」の機能、つまり他の動物とは異なる感情や記憶・言語などの高度な脳の機能のことです。そのため、高次脳機能障害では、以下のような症状が現れてきます。

1 記憶障害

事故の前や、事故が起きた後のことが思い出せない、また新しいことが覚えられないという症状です。
アズール法律事務所では、実際に交通事故で高次脳機能障害となった被害者の方を見てきています。高次脳機能障害の症状の中では記憶障害が最も多く、特に事故の前後については全く記憶がないという症状が多くみられます。
場合によっては事故直後から母親の顔も分からなかったり、漢字が全く書けなくなってしまったりします。事故後かなりの時間がたっても、道を覚えられない、作業手順を覚えることが難しいなど、実際の仕事をする上での障害が残る場合もあります。

2 注意障害

これは一つのことになかなか集中できない症状です。
一つのことをするのにほかのことに気を取られてなかなか集中できません。また集中力そのものがなくなっているため、いつもぼーっとしている症状もよく見られます。
何か物を取りに行ったのに、何を取りに行ったかを全く忘れてしまったりします。

3 遂行機能障害

これは段取りを立てることができない症状です。
計画通りに行動することができません。次に何をすればよいのか、計画を守れません。
さらには、自分で計画を立てること自体ができないこともあります。
何をしてよいかわからないためぼーっとしていることがあります。
とにかく計画立てて行動できないため、日常生活にも時間がかかります。

4 行動情緒障害

これは感情や意欲のコントロールができない症状です。
事故前と性格が変わってしまったり、すぐにパニック状態になるなどの症状です。
典型的な症状が「怒りっぽくなった」というものです。
時には家族に暴力を振るうなどで警察沙汰になることさえあります。
気分の起伏が激しい場合もあり、ちょっとしたことで激怒したり、逆に一日中何もせずぼーっとしていることもあります。
「事故前と比べて性格が全く変わってしまった。」ご家族の方がよくおっしゃる感想です。

びまん性軸索損傷の治療費、賠償金

交通事故でびまん性軸索損傷と診断された場合、加害者がいる事故では加害者の契約している保険会社が治療費を支払うことになります。
ほかにも保険会社から支払ってもらえるお金(賠償金)の項目としては下記のようなものがあります。

  • 治療費
  • 交通費
  • 付添費
  • 入院雑費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 逸失利益
  • 後遺障害慰謝料
  • 将来看護費
  • 将来雑費
  • 将来治療費
  • 将来器具代
  • 将来ベッド代
  • 車両改造費
  • 将来車両買替費用
  • 自宅改造費
  • 親族固有の慰謝料

賠償金は全額受け取れるのか?

計算機イメージ

交通事故の被害にあったら、当然治療にまつわる全てのお金が保険会社から支払われるはずです。
ところが現実にはなかなかそういうわけにはいきません。保険会社は営利会社ですから、必要性がないと判断されてしまうと一切支払われません。
例えば、交通費です。被害者本人が通院する場合はともかく、親族の交通費はほとんど支払われません。お見舞いとか付き添いの場合もほとんど支払われないこともあります。
実は、現在の病院は「完全介護」といって、患者の全ての面倒を病院がみるという建前になっています。
そのため、親族が着替えなどを毎日持参しても、それは「特に治療には関係のない見舞い」として交通費などが支払われないのです。

保険会社の支払い拒否にあった場合、裁判所に申し立てをしている余裕などはありませんし、実際的ではありません。
結局は弁護士に依頼し、弁護士に交渉してもらうのが良いということになります。

びまん性軸索損傷の後遺障害等級

ここからは治療をしても治らなかった場合の後遺障害に関わる問題です。
実は医師に「びまん性軸索損傷」であると診断されただけでは慰謝料などは受け取れません。後遺障害等級というものを取得する必要があります。

「後遺障害等級」には、別表第1と別表第2があり、さらに1級から14級の等級が決められています。別表第1の1級が一番重い症状の場合に認められる等級です。
どの症状がどの等級にあたるのか、詳細な審査基準が決められています。

びまん性軸索損傷が該当する後遺障害等級

びまん性軸索損傷が何級にあたるのか、それは症状の程度によって異なってきます。重い症状から1級、2級となっていきます。
実際の後遺障害等級は下記のように定められています。

1級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
2級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
3級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5級神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
7級神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
9級神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

後遺障害等級に認定されるための手続き

後遺障害等級はある団体に申請を出さないと認めてもらえません。後遺障害等級を認定する「損害保険料率算出機構」という団体です。
ただ、損保料率機構は申請されたものに対して審査を行うところですので、後遺障害等級に認定してもらうためには、損保料率機構へ申請を行う必要があります。

申請方法は3つあります。

  • 加害者請求
  • 事前認定
  • 被害者請求

このうち加害者請求はほとんど行われないため、事前認定と被害者請求について説明します。

事前認定:加害者の保険会社が申請する方法。保険会社が書類などを全て集めてくれるため被害者にとっては手間が省ける。

被害者請求:被害者自身が申請を行う方法。被害者自身が書類を集めるため手間がかかる。

これだけ見れば事前認定がいいように思えます。
しかしここに落とし穴があります。
実は保険会社が書類などを集めるといっても、ある程度のものしか集めてくれません。また必要な検査などが抜けていても、改めて検査をする必要があるなどということは教えてくれません。
それどころか、「この被害者はそれほど大したことはない」というような趣旨の意見書を勝手につけて申請することすらあります。
結局は被害者側で申請することが重要です。

もちろん被害者請求を自分で申請するといっても、どういった書類を集めてよいか分からない方がほとんどだと思います。そのため、実際には被害者が弁護士に依頼して申請を行うことがほとんどです。

びまん性軸索損傷の慰謝料・賠償金

被害者請求をきっちり行なって、狙ったとおりの後遺障害等級が取れた場合、の慰謝料などの賠償金はどれくらい受け取れるのでしょうか。
これは実際に被害者の収入や年齢にもよるので、個々の事案ごとにかなりの差があります。
大まかにですが、別表第1の1級にもなると、3億円から5億円(過失割合を考慮しない場合)にもなります。
このため、いかにしっかりと後遺障害等級を取っていくかが重要なのです。

慰謝料・賠償金の3つの基準

実は後遺障害等級が取れたからといって、自動的に何億円ものお金が保険会社から支払われるわけではありません。
最終的な示談段階でも、保険会社は払い渋ります。

「弊社基準で最大限考慮した額です!」
保険会社の担当者は常にこういいます。
だまされてはいけません。
実際に弁護士に依頼すれば、さらに増額できる場合が多いです。

なぜなのか?
慰謝料・賠償金には「自賠責保険の基準」「任意保険の基準」「弁護士の基準」という 3つの基準があるからです。

3つの基準

自賠責保険は、被害者に最低限の保障を行うというものですから、一番低い金額なのはしようがありません。
問題は任意保険会社の基準と、弁護士が裁判などで争う際の基準が全然違うことです。
裁判を前提に弁護士が交渉しないと、保険会社は低い額で提示をして示談しようとします。
これはどこの大手保険会社でも同じ対応です。

弁護士基準で保険金を受け取るには?

弁護士基準で保険金を受け取るには、自分で裁判をするか、弁護士に依頼するほかありません。
保険会社の提示と、弁護士が介入し示談した金額では何倍も異なる場合があります。
アズール法律事務所でも、現在までに弁護士費用で損をしたという方は一人もいらっしゃいません。
正直に申し上げますと、弁護士が介入しても金額が変わらなかったという方は お二人いらっしゃいますが、その場合は弁護士費用はいただきませんでしたので、損はされてません。

びまん性軸索損傷では様々な問題が出てきます。
またかなり重症ですので、弁護士が介入することで、最終的に受け取る金額が数千万円単位、場合によっては億単位で異なってくる可能性もあります。
心理的負担を減らすためにも、まずは一度弁護士にご相談ください。

代表弁護士に一問一答

Q. アズール法律事務所の特徴は?

交通事故を専門的に扱う法律事務所だということです。
特に意識不明の重体の方や、高次脳機能障害の方など、複雑な交通事故を多くご依頼いただいております。

Q. 対応できる地域は?

これまで、北は北海道から南は沖縄県まで日本全国からご依頼をいただいています。
依頼者の方とは、私自身が出張して面談させていただくことも多いのですが、最近は電話やビデオ会議での面談も多くなっています(新型コロナの影響もあり…)。いずれにしろ臨機応変に対応しておりますので、まずはご相談ください。

Q. どのように依頼者に接していますか?

アズール法律事務所では、とにかく素早く、かつフレンドリーに、を心がけております。
一度お電話いただければ、事務所の雰囲気もお伝えできるかと思います。

(アズール法律事務所 代表弁護士 中原敏雄)

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