2021年8月21日更新
交通事故で頭に強い衝撃を受けると「高次脳機能障害」という後遺症が生じることがあります。脳の「覚える」「考える」などの機能がうまく働かなくなるという非常に深刻な障害です。
今回は交通事故による高次脳機能障害で、アズール法律事務所に相談をいただいたKさん(30歳 男性)の実例をご紹介します。同じように高次脳機能障害で悩んでいる被害者とご家族の方のお役に立てば幸いです。
なお、具体的な相談が必要な場合には、どうぞお気軽にアズール法律事務所にお問い合わせください。
目次
高次脳機能障害の原因となった交通事故
Kさんが交通事故に遭ったのは3年前のことです。夜、バイクで帰宅する途中でした。
突然センターラインオーバーしたトラックに突っ込まれたKさんは、道路に投げ出されて意識を失いました。脱げたヘルメットは反対車線の歩道まで飛ばされ、トラックに巻きこまれたバイクはぐちゃぐちゃに壊れてしまいました。Kさんにはその時の記憶はまったく残っていないということです。
Kさんは「脳挫傷、顔面骨折、右大腿骨骨折、肺挫傷・気胸、肝損傷」という重傷で、駆けつけた救急車で病院に運ばれました。その日の夜から翌日の明け方までかけての緊急手術が行われ、なんとか一命を取り留めることができました。そして2ヶ月半の入院治療の後、ようやく退院して自宅に戻ることができました。
退院後の経過と後遺症
退院後、大腿の骨折や内臓の損傷などについては治療の経過は良好でした。しかし顔には目立つ傷あとが残ってしまいました。また顔面骨折の影響で以前のように表情をつくったり、ものを噛んだりすることが上手くできなくなってしまってストレスを感じているということでした。
しかし、そうしたことよりも深刻だったのは、事故に遭ってから、極端に物忘れがひどくなったり、イライラしたり、怒りっぽくなったりといった「高次脳機能障害」が疑われる症状があったことです。
高次脳機能障害の診断と治療
救急搬送された病院を退院してから2ヶ月ほど経った後、家族の勧めもあり、Kさんはリハビリテーション病院の脳神経外科を受診しました。検査を受けたところ、やはり記憶障害を主とする高次脳機能障害が認められるということでした。
その後、Kさんは9ヶ月ほどリハビリテーション病院で高次脳機能障害の通院治療を行いました。認知トレーニングを中心としたリハビリテーションと、精神症状を改善するための投薬治療を受けましたが、残念ながら症状が大きく改善することはありませんでした。
Kさんには、現在も以下のような高次脳機能障害の症状があります。ご家族によると、いずれも事故前のKさんからは考えられないことばかりだということです。
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高次脳機能障害をアズール法律事務所に相談
Kさんは、リハビリテーション病院に通いながらも、治療費や将来のことについては、ずっと不安を感じていたそうです。そこでネットでいろいろと調べたところ、交通事故での高次脳機能障害について無料で相談できるアズール法律事務所のホームページを見つけ、思い切って電話をしたということでした。
最初に相談員の方に自分の状況をお話ししました。緊張していたのですが、こちらが話しやすいよう丁寧に質問をしてくれたので助かりました。
弁護士の先生も気さくで優しい方でした。なにより自分が悩んでいることを理解してもらえたので、心が軽くなりました。
アズール法律事務所の担当弁護士は、高次脳機能障害で後遺障害等級をとった上で、保険会社に慰謝料などを請求したほうが良いことをKさんに伝え、さらに今後の手続きの流れや、どのくらいの慰謝料・賠償金が受け取れるかの目安についてもお話ししました。
Kさんは、弁護士の話に納得いただき、今後の手続きや交渉をすべてアズール法律事務所に任せていただけることになりました。
高次脳機能障害で後遺障害5級に認定
事故からちょうど1年経ったころ、担当医師とも相談して、治療を終了して後遺障害等級の審査を受けることにしました。必要書類の作成や、病院・警察署等からの資料の取り寄せについては、アズール法律事務所がすべて手配し上で慎重に確認し、万全を期しました。
高次脳機能障害の後遺障害認定の場合は「日常生活状況報告書」という書類を被害者ご本人かご家族が書いて提出するのですが、何をどう書けば良いのかわからない場合が多いため、これもアズール法律事務所のスタッフがお手伝いをさせていただきました。
コロナ禍のせいもあって、審査の結果が出るまでは5ヶ月ほどかかったのですが、結果的に高次脳機能障害で「5級2号」の後遺障害等級が認定されました。
顔の傷あとについても別途「9級16号」に認定されていたので、あわせて「併合4級」ということになりました。
後遺障害 5級2号 | 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
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後遺障害 9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
高次脳機能障害で約1億円の賠償金
後遺障害等級が決まった後は、保険会社との示談交渉を行うことになります。交渉は弁護士がすべて代行するので、Kさんにはお待ちいただくだけとなりました。折に触れて途中経過を報告させていただいたので、ご安心いただけたようです。
総額で1億円を超える賠償金が認められたという連絡をした際には、さすがにKさんも驚いていたようです。それと同時に、やっとひと区切りがついて、これからの生活についても目処が立ったことで、安堵されたようです。事故に遭ってからずっと献身的にKさんを支えておられた奥様にも、ようやく安心していただくことができました。
項目 | 賠償金額 |
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治療費等 | 約1138万円 |
雑費・交通費等 | 約15万円 |
入院付添費 | 約34万円 |
通院付添費 | 約23万円 |
休業損害 | 約364万円 |
入通院慰謝料 | 約200万円 |
後遺障害慰謝料 | 約1670万円 |
逸失利益 | 約6625万円 |
将来治療費 | 約99万円 |
合計 | 約1億168万円 |
弁護士による解説
本件のポイントは、高次脳機能障害で確実に後遺障害等級を取ることと、示談交渉で保険会社に弁護士基準の慰謝料を認めさせること、そして逸失利益の計算方法の3つでした。
後遺障害等級の認定
高次脳機能障害で確実に「後遺障害等級」の認定を受けるために、審査機関に提出する書類や資料には万全を期しました。後遺障害診断書に加えて治療途中の経過診断書や脳外傷が確認できるCT画像とMRI画像も用意しました。
さらに、被害者の方による日常生活状況報告書と弁護士からの意見書も添えることで、無事に後遺障害5級(併合4級)に認定されました。
弁護士基準の慰謝料
慰謝料については後遺障害等級ごとの基準で、だいたいの金額が決まっています。そして保険会社の基準ではなく「弁護士基準」で算出することで金額が倍近くにまでなる場合がほとんどです。
弁護士が入って交渉すれば、保険会社は弁護士基準の金額を認めざるを得ないという場合が多く、今回もこちらの要求どおりの慰謝料が認められました。
逸失利益の計算
後遺障害によって仕事ができないことで減ってしまう収入を賠償する「逸失利益」は、事故の前の年収を基礎収入として計算します。
ただし、本件のように被害者の方が若く、事故がなければまだこれから年収が増えると予想される場合は、それを考慮して全年齢平均賃金を基礎収入として計算することを、保険会社に認めるよう交渉する必要があります。
本件についても、全年齢平均賃金を基礎収入とするこちらの提案を認めさせることに成功しました。
まとめ
交通事故によって、私の人生は一変してしまいました。日常生活でも不自由なことが多いですし、仕事も思うようにはできません。「なぜ自分が…」と、本当に悔しい思いをしました。
しかし、高次脳機能障害にくわしい弁護士の先生と出会って、親切にサポートしてもらったことで、だいぶ楽になりました。十分な賠償金を受け取れたことで、経済的にはもちろん、気持ち的にも区切りがついて落ち着くことができたように思います。
弁護士の中原先生はじめ、アズール法律事務所のスタッフのみなさんの献身的なサポートには、本当に感謝しています。ありがとうございました。
高次脳機能障害は交通事故による後遺障害の中でも特に深刻なもののひとつです。これまでアズール法律事務所に、高次脳機能障害をご相談いただいた多くの被害者の方やご家族も、それぞれが本当に大変な思いをされています。
しかし、高次脳機能障害は外見からは判りにくく、適正な賠償金を受け取るためには、専門的な知識がどうしても必要になります。高次脳機能障害に精通した弁護士によるサポートがやはり欠かせません。
アズール法律事務所では交通事故と高次脳機能障害のエキスパートとして、被害者とご家族の方々に寄り添い、適正な賠償金を払おうとしない保険会社と戦ってきました。
もし、ご自身やご家族が交通事故による高次脳機能障害で悩んでいるなら、できるだけ早めにご相談ください。きっと解決の糸口が見つかるはずです。
※本記事では個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しております。ご了承ください。